裸のランチ

裸のランチ 【Blu-ray】

裸のランチ 【Blu-ray】

バロウズもクローネンバーグも知らない高校生の頃、私はいつもコーヒーの臭いが充満している小さなレンタルビデオ店に通っていた。一見なんの店なのかわからないくらい地味な店構え。店内は常に薄暗く、店主のおじさんがいくなることも多かったので、営業しているのかどうかも怪しい店だった。50メートル先には豪華な電飾を施した品ぞろえの良い別のレンタルビデオ店があったため、その店に客をとられてしまい、店内はいつもガラガラ。店主のおじさんは店の奥のほうに座り、のんびりコーヒーを飲みながら、小さなテレビ画面に映る映画のビデオを見つめていた。一度だけ店主のおじさんが話しかけてきたことがあった。この映画は面白いから見た方がいい。店主のおじさんはビデオのパッケージを私に見せながら熱心に解説をしてくれたのだが、私にはなんのことやらサッパリわからなかった。その時、店主のおじさんが手にしていたのは「ワンダとダイヤと優しい奴ら」のビデオだった。私は店主のおじさんのオススメを無視して、人間の顔の部分がタイプライターになっているパッケージの、得体の知れない不気味なビデオを手に取った。