サマーウォーズ

サマーウォーズ [DVD]

葬式の日、当時小学生だった私と妹は、従姉妹のY子とトランプのババ抜きをして遊んでいた。Y子は私より五歳年上の女学生で、それまであまり接触する機会は無かったが、大人たちから私たち兄妹の子守を命じられていたのだ。Y子からは私たちを楽しませようという気持ちが微塵も感じられなかった。Y子は仏頂面で器械的にトランプを切って配り、刺のある命令口調で子供たちに指示を出すのだった。Y子の母親のJ子は大変なヒステリー持ちで、いざ発作が始まるとJ子の家族も手が付けられないくらい酷く暴れた。ある時は親族の家の庭に生ゴミや糞尿をまき散らし、親族の謂れない誹謗中傷をプリントしたビラを近所にばら撒き、得体の知れない巨大な壺をしつこく売りつけようとしたこともあった。ここまでは全て作り話だが、生意気盛りの私もJ子のヒステリーの噂を耳にしており、子供心にJ子とY子を母子ともども軽蔑していた。私たち兄妹は無表情で何も喋らずにババ抜きをしていた。Y子はY子で子供相手にババ抜きで遊んでやっているつもりだったのだろうが、私たち兄妹も子供だましの退屈なババ抜きに付き合ってやっていたのだ。しかし、J子はヒステリーの子供だから、おそらくは「あたしが遊んでやってるのに、なんでこいつら嬉しそうな顔しないの」とでも思ってイラついていたのだろう。Y子は扇形に開いたトランプの束を私の鼻先に突きつけて、小刻みに前後に揺らしながら「ほらっ！ツトムの番だよ！さっさとやんな！」と言った。私は軽蔑しているY子から名前を呼び捨てにされたことにショックを受けた。そして、私は手に持っていたトランプの束をY子の顔面に投げつけると、妹の手を引いて外に駈け出したのだった。『サマーウォーズ』は親戚一同力を合わせてインターネットの鬼と戦う映画だった。