フロウ〜水が大企業に独占される!〜

市民体育館にペダルを踏むと水が出る水飲み器がやって来た日のことは、まるで昨日のことのように覚えています。まだ子供だった私は、来る日も来る日も市民体育館に通い続け、水道から出る水よりも冷たくて美味しいその水を、知らない子供たちと奪い合うようにして飲んでいました。ある日、いつものように自転車で市民体育館に水を飲みに行くと、いつもハナミズを垂らしていることで有名なヒサノブが一心不乱に水を飲んでいました。当時の私はクラスにひとりやふたりは必ずいた何も喋らないタイプの子供だったので、ヒサノブに声をかけるようなこともせず、足音も立てずにヒサノブの方に近づいていきました。そして、水飲み器まで約2メートルほどの所まで来た時に、ヒサノブが水道でいう蛇口の部分を完全に口に咥えていることに気づいたのです。私は素早く踵を返し、黙ってその場を後にしました。そして、もう二度と水飲み器で水を飲むのはやめようと思ったのです。『フロウ〜水が大企業に独占される!〜』は大企業が水を独占することによって、子供たちが清潔な水を飲むことができなかったり、地盤沈下で町が沈んだりする話のドキュメンタリー映画でした。ヒサノブのハナミズくらいで大騒ぎしていた自分が恥ずかしくなりました。