未知との遭遇

いっぽうの手で所定の位置に物を置き、それと同時に、もういっぽうの手でプラスチックケースから物を一つ取り出す。手に持った物を手の中で潰さないように気を付けながら、両手の手の甲を使い二つのボタンを同時に押す。機械のモーターが作動し、一瞬にしてただの物を製品へと変える。製品が機械から排出されると同時に、私はいっぽうの手で所定の位置に物を置く。私はこの単調な繰り返し作業を、三度の休憩を挟んで一日に八時間行っている。私は決してこんなことをするために生まれてきたわけではない。今こうやって機械を操作している私は本当の私ではないのだ。いつか友好的な宇宙人がUFOに乗って地球にやってきて、私を宇宙に連れて行ってくれればいいのに。しかし、宇宙人は存在しない。